自治体による代執行で解体される特定空き家(周囲に危険や秋影響が及ぶと自治体から認定された空き家)が全国的に増加してきています。
滋賀県野洲市は、著しく危険な状態にある同市高木の木造平屋建て家屋(約40平方メートル)を「特定空き家」と認定し、18日から略式代執行で除去を始めた。1週間ほどで解体作業を終える予定。
朝日新聞
ニュース記事によると、滋賀県野洲市が危険状態の木造平屋建て家屋を特定空き家と認定し、所有者不明であり許可なく建てられたこの家屋を解体。長期間使われずに損傷が進み、ほぼ倒壊状態にあったこの家屋は、野洲市が今年1月に空き家対策特別措置法の特定空き家と認定し、約125万円を投じて解体を行うことを決定したとのことです。
昨今、特定空き家が略式代執行により解体されるニュースは多くなってきています。
通常、代執行にかかった費用はいったんは自治体が建て替えますが、最終的には所有者へ請求されることになります。
もしも支払うことができない場合は、税金の滞納と同等の扱いをされることが行政代執行法という法律により定められていますので、最終的には財産の差し押さえなどをされる可能性があります。
それに加えて、代執行により請求された費用を払えない場合は、前述の通り税金の滞納と同じ扱いとなるので、たとえ自己破産をしても、免責されることはないのです(非免責債権)。
ただし、今回の場合は所有者が不明ですので、略式代執行となり、費用の請求自体が難しい事案となります。
所有者不明の特定空き家に関しての対応は自治体により様々ですが、主だった対応としては、①略式代執行で対応するケースや②財産管理制度を利用するケース、財産管理制度と代執行を併用するケースなどが挙げられます。
問題空き家に対しては、法整備も進んだことで、今後の各地自治体の対策についても整備されていくのかもしれません。
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今回の空き家ニュースに関連するキーワード
空き家ニュースの中でよく使用されるキーワードについて解説します。今回は「略式代執行」です。
略式代執行
「略式代執行」は、所有者が不明であったり連絡が取れない場合に、公的機関が危険な建物の解体などを行うための法的手段です。空き家や放置車両が近隣住民の生活に悪影響を及ぼしていたり、公衆の安全を脅かしている場合に、市町村などの地方公共団体がこれを処分することができます。
略式代執行の呼ばれるとおり、「代執行」の手続きを簡略化した手続きです。
一般的な代執行は、たとえば賃貸人が賃借人に対して退去を求めても応じない場合などに、裁判所の判断に基づいて実施されます。賃貸人が裁判所に申し立てを行い、裁判所が退去命令を出した後になお退去しない場合、裁判所の執行官が介入して退去を強制することができます。
一方、略式代執行は、主に公衆の安全や生活環境を保護するために行われます。公的機関が、所有者不明の空き家や放置車両などの問題に対して直接介入し、安全な状態にするための処分を行います。この場合、裁判所の介入は必ずしも必要ではなく、市町村などの地方公共団体が直接行動を起こすことが可能です。
略式代執行の手続きは、まず当該団体が危険な状態にある物件の所有者に対して改善命令を出します。この命令に従わない場合や、所有者が不明であったり連絡が取れない場合には、団体が直接解体などの処分を行うことができます
なお、略式代執行で発生した費用については、原則として物件の所有者に請求されます。ただし、所有者が不明であったり、所有者が費用を支払うことができない場合には、国や地方公共団体が一部または全部を負担することもあります。
財産管理制度
財産管理制度とは、財産の所有者や相続人が不明な場合に、家庭裁判所が選任した財産管理人が当事者に代わって財産の保存や処分を行う制度です。
この制度では、信頼できる第三者が法律的に指定されます。所有者の所在が分からないときは『不在者財産管理人』、相続人の存在が不明の場合は『相続財産管理人』が選任されます。
「財産管理人」と呼ばれ、法的にその人の利益のために財産を管理し、状況に応じて適切な支出を行ったり、財産を維持・増やすための投資を行ったりします。
また、財産管理人を専任すれば、空き家の中に残された残置物も管理人の判断で処分することができると考えられています。
空き家の中に残された動産の扱いは難しく、トラブルの元となることが多いので、管理人の判断で処分までできることのメリットは大きいと考えられます。