利用する予定のない空き家を所有している場合、「使わないなら解体したほうが良いのではないか?」と疑問に思ったことはありませんか?
一見すると解体が最も合理的な選択のように思えますが、実際には多くの空き家がそのまま放置されています。これはなぜでしょうか?
このコラムでは、空き家がなぜ解体されないのか、その理由を多角的に掘り下げていきます。
空き家に関する整理については以下のコラムで詳細に解説しています。もしご興味がございましたらご覧ください。
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空き家が壊されない(解体されない)5つの理由

空き家が解体されない理由は、当然ですがその空き家によりケースバイケースです。経済的な理由であったり、心情的な理由であったり、すぐに解決できないような理由である場合が大半です。
このセクションでは、代表的な空き家が解体されない5つの理由をご紹介します。
解体費用の経済的負担が大きい
解体工事の費用は、経済的に大きな負担になります。
例えば、一般的な住宅の解体には、(大きさや構造にもよりますが)150万円~250万程度の費用が必要となるケースが多く、場合よってはさらに高額になることもあります。
特に、都市部では狭い敷地や隣接する建物との間隔が狭いため、クレーン車などが通れなかったり、作業に特別な配慮や技術が必要となるなど、費用が高額になる傾向にあります。
更地にすると税金が増える
空き家が解体されない理由の1つとして、空き家を解体し更地にすると、固定資産税が増加することが挙げられます。
ただし、建物が残っていればそれだけで住宅用地の特例がずっと適用されるわけではありません。
老朽化などにより、ボロボロになってしまった空き家は、周囲に危険を及ぼす可能性がある場合、自治値により「特定空き家」に指定されることになります。
「特定空き家」に指定され、自治体からの指導が進むと、税制上の優遇措置が適用されなくなるため、土地のうえに建物があったとしても固定資産税が増えることになるので、注意が必要です。
所有者の認知能力の低下
認知症などにより判断能力が低下している場合、不動産の解体や売却ができません。法律上、判断能力が不十分な場合、その人の財産を処分することは原則として認められていないからです。
実家の所有者である親が認知症になった場合、家族や親族が後見人として指定され、法的な手続きを通じて不動産の処分などの重要な決定を代行することが一般的ですが、しかし、後見人が不動産の処分を進めることは、合理的な理由と裁判所の許可が必要になります。
多くの場合、親が認知症になってしまったら、その実家は「何かあるまでは現状維持」となってしまうため、解体されずに放置されることになるのです。
再建築に関する法的な制約
空き家の解体に踏み切れない一因として、「再建築不可」という規制が大きなネックになっているケースもあります。
再建築不可とは、一度建物を解体した場合、その土地に新たな建築物を建てることが法律上許されない状況を指します。
この規制により、土地所有者は建物を解体することで、将来的にその土地の価値を大幅に損なうリスクを背負うことになります。
住宅が建っている土地であれば、一度建物を解体してしまうと、将来的に二度と建物が建てられなくなってしまうため、土地の利用価値が著しく低下することになります。
その結果、土地を売却しようとしても、買い手が見つかりにくくなる可能性があるため、解体に慎重になるのも頷けます。
空き家には思い出が詰まっている
空き家を解体しない理由のうち、特に解決が難しいのがその空き家を実家として育った所有者や親族の想いです。
実家は長年の記憶や大切な思い出が詰まった場所です。たとえ現実的には利用されていない空き家であっても、解体という選択をためらってしまうのはよくあるケースです。
また、子どもたちが実家を解体したいと考えていても、親族の中に空き家の解体に反対する人がいるケースもよく耳にします。
特に年配の親族の中には、家族の歴史や祖先への敬意を重んじる考え方を持っている方も少なくありません。彼らにとって、家を解体することは、家族のルーツや過去を断ち切る行為に等しいと感じられることがあります。
このような場合、家族内での意見の相違が、解体作業の進行を妨げる要因となってしまいます。
空き家を壊す(解体する)デメリット

先程のセクションでは、解体をしない理由について解説しました。その中で解体に関するデメリットについて個別に言及しましたので、このセクションでは、空き家の解体がもたらす主なデメリットについて改めてまとめます。
まず、空き家を解体すると、住宅用地としての特例が適用されなくなります。この特例は、住宅用地に対して固定資産税の負担を軽減するものですが、解体後はその土地が住宅用ではなくなるため、固定資産税が高くなってしまうのです。敷地が広い場合には、特に経済的な負担となることでしょう。
次に、再建築不可の問題です。土地の所在地や地域の条例によっては、一度建物を解体すると、同じ土地に新たな建物を建てることができない場合があります。
また、多くの家には家族の歴史や思い出が詰まっています。家を解体することは、それらの思い出を物理的にも心理的にも失うことを意味します。このこの喪失感や悲しみは、避けて通れないデメリットと言えるでしょう。
空き家を壊す(解体する)メリット
本セクションでは、空き家を解体するメリットを解説していきます。
まず、土地のみの状態であれば、月極駐車場やコインパーキング、資材置き場などの用途に活用することができます。また、将来的に価値が上昇する可能性がある土地を保有し続けることで、資産価値を高めることができる場合もあります。
次に、建物が解体された更地状態のほうが、一般的には売却しやすくなります。
建物が存在すると、購入希望者はその建物の状態や用途に制限されることがありますが、土地のみの場合はより幅広い用途を想定できるため、潜在的な購入者の層が広がります。さらに、土地のみであれば、購入者が自らのビジョンに合わせて建築することが可能です。
また、建物があることで発生する可能性のある近隣からのクレームも減る、建物の維持費(修繕費用や税金、保険料など)が不要になるといったメリットもあります。
【まとめ】古い空き家がなぜ解体されないのか?5つの理由を徹底解説
本コラムでは、長期間放置されがちな空き家がなぜ解体されずにそのままになるのか、その背景にある複数の理由(解体費用の高さ、税金増加のリスク、など)、メリット・デメリットなどを解説しました。
今空き家を所有されていて、空き家を解体したほうが良いのかどうか悩まれている場合は、本コラムで解説させていただいた空き家を解体するデメリットを比較検討してみることをオススメします。