「空き家のガス契約をどうすべきか?」というご質問がよく寄せられます。
家を長期で空けることが決まっている場合、契約を続けるべきか解約すべきかは、「その空き家の利用予定がどの様になっているか」によって異なります。
本コラムでは、特に長期間使用予定がない空き家のガス契約について、解約することのメリットとデメリットを掘り下げていきます。
解約する最大の理由は、無駄な維持費を削減できる点にあります。しかし、解約には再開時の手数料や手続きの煩雑さがデメリットとして考えられます。
空き家のガス契約を止めるかどうかは、メリットとデメリットを天秤にかけながら、自身の状況に合った選択をすることが重要です。
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【結論】空き家のガス契約は止めるべき?
まず最初に結論から先にお伝えします。
特殊な事情のない、以下のような一般的な空き家であれば、ガス契約は解約してしまって問題ないケースが大半です。
- 相続したまま放置してしまっている実家(空き家)
- 親が施設に入り、今後使用する予定がない実家(空き家)
- 長期間使用する予定のない空き家
それでは次のセクションから、具体的に解約のメリットとデメリットを詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
空き家の整理・片付けについては以下のコラムで詳細に解説しています。もしご興味がございましたらご覧ください。
ガス契約解約(ガスを止める)のメリット
空き家のガス契約を解約することの一番大きいメリットは火災リスクの回避です。
人が済まない空き家には、設備の老朽化などによるガス漏れやそれに伴う火災といった事故のリスクが常に潜んでいます。契約を解約し、ガスの供給を止めることで、これらのリスクを根本的に回避することができます。
次に、経済的な観点から見たメリットとして、維持コストの削減が挙げられます。
空き家であっても、ガス契約を継続している限り、基本使用料が毎月発生します。この基本使用料は、実際にガスを使用していなくても支払う必要があります。
金額的には大したことはないかもしれませんが、長期間にわたって見れば、無視できない金額になる可能性もあります。
契約を解約すれば、この不要な出費を完全にカットすることが可能となり、経済的な負担を軽減できるのです。
ガス契約解約(ガスを止める)のデメリット
ガス契約を解約する際に留意すべき点は、解約後に急にガスを使いたくなったとしても、ただちに使用を再開することはできないという点です。
当然ですが、ガスを再び利用するためには、ガス会社との新たな契約手続きが必要になります。場合によっては、設備の安全点検や供給設備の再接続作業が必要になることもあります。
さらに、再契約時には初期費用や手数料や保証金が発生することが一般的です。これらのコストは、場合によってはかなりの額になる可能性があり、特に頻繁に契約の解約と再契約を繰り返す場合、無視できない経済的負担となり得ます。
このように、ガス契約の解約は、将来的な使用の可能性と再契約に伴う手間や費用を十分に検討した上で決定することが重要です。急な必要性が生じた場合に対応できないリスクや再契約の手間を考えると、解約の決断は慎重に行う必要があるでしょう。
ガス契約を維持したほうが良いケース
以下のような状況では、契約を続けておくことが合理的な選択となるでしょう。
空き家を定期的に利用する予定がある場合
空き家を定期的に、たとえば数週間から数ヶ月に一度程度は使用する予定がある場合です。
このような使用頻度であれば、解約と再契約を繰り返す手間やコストを考慮すると、契約を維持した方が全体として経済的にも合理的です。
また、近い将来に売却を予定している場合も、契約維持が有利です。内見時にガス設備の動作確認ができることで、物件の魅力向上につながります。特に、賃貸の場合は入居者がすぐに生活を始められるメリットがあります。
ただし、これらの判断は個々の状況によって異なるため、長期的な計画や費用対効果を慎重に検討することが重要です。例えば、年に1〜2回しか利用しない場合は、その都度再開栓する方が経済的な可能性もあります。具体的な試算を行い、最適な選択をすることをおすすめします。
空き家を臨時で使用する可能性がある場合
空き家を臨時で使用する可能性がある場合も、ガス契約を維持したほうが良い場合があります。
例えば、家族や友人が突然訪れた際や、自身が急にその地域を訪れる必要が生じた際に、すぐに生活を始められる準備が整っていることは大きな安心材料となります。
その空き家を賃貸にする予定がある場合
空き家を賃貸に出す予定がある場合にも、ガス契約を維持しておくべきです。
賃貸物件として提供する際には、入居者が直ちに生活を始められるように、ガスを含む各種のライフラインが利用可能な状態にしておくことが当然求められます。契約を維持しておくことで、入居希望者に対して即入居可能な環境を提供できます。
空き家のガス停止・解約手続きの詳細ガイド
空き家のガスを停止または解約する際は、適切な手順を踏むことが重要です。このセクションでは、ガス会社への連絡方法から具体的な手続き、そして費用に至るまでを解説します。
ガス会社への連絡方法と必要書類
ガスの停止や解約を行う際は、まずガス会社への連絡が必要です。一般的な連絡方法と準備すべき書類は以下の通りです。
- 電話での申し込み
- オンラインフォームでの申し込み
- 窓口での直接申し込み
多くのガス会社では、電話やオンラインでの申し込みが可能です。大手ガス会社であれば、専用のフリーダイヤルが用意されているケースが多く、また、24時間365日受付を行っています。また、ウェブサイト上の申し込みフォームを利用することもできます。
申し込みの際には、以下の情報や書類が必要となる場合があります。
- お客様番号(検針票やガス料金請求書に記載)
- 契約者名
- 契約住所
- 解約希望日
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
事前に必要書類を準備しておくことで、スムーズな手続きが可能となります。また、解約後の料金精算のため、転居先の住所も伝える必要があります。
プロパンガス停止の具体的な手順
プロパンガス(LPガス)の場合、都市ガスとは異なる手順が必要です。以下に具体的な手順を示します。
- ガス会社への連絡と日程調整
- ガスボンベの撤去
- 残ガス量の確認と精算
- 設備の安全確認
まず、契約しているプロパンガス会社に連絡し、停止希望日を伝えて日程を調整します。多くの場合、ガス会社の担当者が現地に来訪し、作業を行います。
ガスボンベの撤去は専門知識が必要なため、必ず専門業者に依頼してください。自己処分は危険であり、法律で禁止されています。撤去の際には、残ガス量を確認し、料金の精算を行います。
最後に、ガス設備の安全確認を行います。長期間使用しない場合は、配管のバルブを閉めるなどの措置を取ることがあります。
ガス解約時の費用と精算方法
ガスの解約には、いくつかの費用が発生する可能性があります。主な費用と精算方法は以下の通りです。
項目 | 概要 | 一般的な金額 |
---|---|---|
基本料金 | 解約日までの日割り計算 | 月額の日割り |
解約手数料 | ガス会社によって異なる | 0〜5,000円程度 |
ガスメーター撤去費 | 必要な場合のみ | 3,000〜10,000円程度 |
基本料金は通常、解約日までの日割り計算で精算されます。例えば、月の半ばで解約する場合、その月の基本料金の半額程度を支払うことになります。
解約手数料は、ガス会社や地域によって異なります。事前に確認することをおすすめします。中には手数料が不要な会社もあります。
ガスメーターの撤去が必要な場合は別途費用が発生することがあります。ただし、多くの場合、メーターはガス会社の所有物であるため、撤去費用は不要です。
精算方法としては、最終的な使用量に基づいて請求書が送られてくるのが一般的です。クレジットカードや口座振替で支払っていた場合は、最終請求も同じ方法で行われることが多いですが、確認が必要です。
不明点がある場合は、必ずガス会社に直接確認するようにしましょう。
空き家のガス管理における注意点とリスク
空き家のガス管理は、安全性と経済性の両面から重要です。適切な管理を怠ると、様々なリスクが発生する可能性があります。ここでは、ガス設備放置のリスク、売却時の注意点、そして長期不在時の管理方法について詳しく解説します。
ガス設備放置のリスクと定期点検の重要性
空き家のガス設備を放置することには、以下のようなリスクがあります。
- ガス漏れによる事故
- 設備の劣化
ガス漏れは最も重大なリスクです。長期間使用していないガス管や接続部分が劣化し、微量のガスが漏れ続けることがあります。これが蓄積されると、火災や爆発の危険性が高まります。
また、設備の劣化も見過ごせません。例えば、ガス給湯器の場合、長期間使用しないことで内部の部品が錆びついたり、配管内に水垢が溜まったりする可能性があります。これらは、将来的に高額な修理費用につながる可能性があります。
これらのリスクを軽減するためには、定期的な点検が不可欠です。具体的には以下のような対策が効果的です。
- 年に1〜2回の専門業者による点検
- ガス漏れ警報器の設置
- 定期的な換気と目視確認
専門業者による点検は、無料で定期点検をしてくれるケースや5,000円から15,000円程度の費用(出張費)をかけて点検を依頼するケースなどがあります。
空き家売却時のガス契約解約タイミング
空き家を売却する際のガス契約解約には、適切なタイミングがあります。以下の点に注意が必要です。
- 内見時の利便性確保
- 引き渡し日程との調整
- 買主との取り決め
内見時にガスが使用できないと、物件の印象が悪くなる可能性があります。特に、ガス給湯器やガスコンロの動作確認ができないことは、買主の不安を招く要因となります。
そのため、売却が完了するまでガス契約を維持することが一般的です。具体的には、以下のようなスケジュールが推奨されます。
- 売却活動中はガス契約を維持
- 売買契約締結後、引き渡し日を確認
- 引き渡し日の1〜2日前にガス会社に解約を申し込む
- 引き渡し当日にメーター確認と精算を行う
ただし、買主との間で別途取り決めがある場合(例:買主が引き続き同じガス会社と契約する場合)は、その内容に従って手続きを進めます。
長期不在時のガス管理と防犯対策
空き家を長期間留守にする場合、長期不在時は必ずガスの元栓を閉めることが基本です。これにより、ガス漏れのリスクを大幅に減らすことができます。
また、ガス管理は防犯対策とも密接に関連します。例えば、ガスメーターの動きを定期的に確認することで、不正使用や不法侵入を早期に発見できる可能性があります。
具体的な防犯対策としては、以下のようなものがあります。
- 防犯カメラの設置
- センサーライトの取り付け
- 定期的な郵便物の回収
これらの対策を組み合わせることで、空き家のガス管理と防犯を効果的に行うことができます。長期不在時の管理については、専門の空き家管理サービスを利用するのも一つの選択肢です。これらのサービスは月額5,000円から15,000円程度で、定期的な巡回や緊急時の対応を行ってくれます。
空き家のガスコスト削減策と試算例
空き家のガス管理において、コスト削減は重要な課題です。ここでは、都市ガスとLPガスの基本料金、ガス停止による年間コスト削減額の具体例、そして効果的な節約テクニックについて詳しく解説します。
都市ガスとLPガスの使用料
都市ガスとLPガス(プロパンガス)では、基本料金に大きな違いがあります。以下に一般的な傾向を示します。
- 都市ガス:月額500円〜1,500円程度
- LPガス:月額1,000円〜3,000円程度
ただし、これらの金額は地域や事業者によって大きく異なるため、必ず個別に確認が必要です。
以下は代表的な都市ガス会社である東京ガスの料金表です(東京地区 / 2024年7月現在)。
ガスの使用量ごとに契約プランが分かれており、一番安いプランだと月額約760円になります。年間だと9,120円になります。
LPガスは都市ガスに比べて基本料金が高い傾向にあります。LPガスは都市ガスとは違い、「公共料金」という扱いではないため、事業者が自由に価格を設定する自由料金となっているためです。
また、ガスボンベの運搬費や管理費などの経費もかかることも料金が高くなる要因です。
参照:プロパンガス料金が高い4つの理由と対策(プロパンガス料金消費者協会)
空家の場合、ガスの使用量は少ないため基本料金の影響が大きくなります。契約プランの見直しも有効な対策です。多くのガス会社では、以下のような選択肢を提供しています。
- 従量制プラン
- 定額制プラン
- 季節別プラン
空き家の場合、使用量が少ない従量制プランが適している可能性が高いです。ガス会社に相談し、最適なプランに切り替えることで、コスト削減につながる場合があります。
ガス停止による年間コスト削減額の具体例
ガスを完全に停止した場合の年間コスト削減額を、具体的に試算してみましょう。以下は、一般的な空き家を想定した例です。
項目 | ガス契約維持時 | ガス停止時 | 差額 |
---|---|---|---|
基本料金 | 12,000円/年 | 0円 | 12,000円 |
最低料金 | 6,000円/年 | 0円 | 6,000円 |
使用料金 | 2,000円/年 | 0円 | 2,000円 |
合計 | 20,000円/年 | 0円 | 20,000円 |
この例では、年間約20,000円のコスト削減が可能となります。ただし、実際の削減額は以下の要因によって変動します。
- 地域や事業者による料金体系の違い
- 契約プランの種類
- 実際の使用量
また、ガスを停止する際の手数料(3,000円〜10,000円程度)や、再開時の費用も考慮する必要があります。長期的な視点で判断することが重要です。
空き家のガス料金節約テクニック
ガス契約を維持しながらコストを抑える方法もあります。以下に効果的な節約テクニックを紹介します。
- 温水器の設定温度調整
- 不要な機器の電源オフ
- 定期的なメンテナンス
温水器の設定温度を下げることで、待機時の熱損失を減らすことができます。例えば、通常40℃に設定している場合、35℃に下げることで、年間1,000円程度の節約になる可能性があります。
また、使用していない給湯器やガスコンロの電源をオフにすることも効果的です。多くの機器は、電源を入れたままだと少量の電力を消費し続けます。これらをこまめに電源オフすることで、年間500円程度の節約につながる場合があります。
定期的なメンテナンスも重要です。年に1回程度、専門業者による点検と清掃を行うことで、機器の効率を維持し、無駄なガス消費を防ぐことができます。点検費用は5,000円〜10,000円程度かかりますが、長期的には節約につながります。
これらの対策を組み合わせることで、ガス契約を維持しながらも、年間数千円のコスト削減が可能です。ただし、空き家の利用頻度や将来の計画によっては、完全なガス停止の方が経済的な場合もあるため、個々の状況に応じた判断が必要です。
災害時を想定したガス設備の安全対策
災害時のガス設備の安全対策は、空き家管理において特に重要です。以下の対策を検討してください。
- 自動遮断装置の設置
- 定期的な耐震点検の実施
- 災害時の連絡体制の整備
自動遮断装置は、地震や異常な使用量を感知すると自動的にガスを遮断します。設置費用は10,000円から30,000円程度ですが、大きな災害時に重大な事故を防ぐ可能性があります。
耐震点検は、通常のガス設備点検に加えて行うことをおすすめします。具体的には以下の項目をチェックします。
- ガス管の固定状態
- 接続部分の緩み
- 老朽化した部品の交換
これらの点検は、専門業者に依頼することが望ましく、費用は1回あたり10,000円から20,000円程度です。
また、災害時の連絡体制を事前に整備しておくことも重要です。例えば、近隣住民や管理会社と連携し、異常があった場合に すぐに連絡が取れる体制を作っておくことをおすすめします。
空き家のガス契約についてよく寄せられる質問
このセクションでは、空き家のガス契約についてよく寄せられる質問についてまとめました。
Q.ガスが使えないとどんな不便がありますか?
一般的な家庭度同様に、空き家でガスが使えないと、暖房(ガスファンヒーターなど)、調理(ガスコンロなど)、給湯器の利用などができなくなります。
Q.空き家のガス契約を解約する際の手順は?
契約しているガス会社の窓口連絡し、解約の意向を伝えてください。担当者より必要な手続きの指示がありますので、それに従ってください。解約時点でのメーター読み取りや精算が行われ、都市ガスであればガスメーターが、プロパンガスであればボンベが撤去されます。
Q.空き家でもガス基本料金はかかりますか?
契約を維持している限り、使用量に関わらず基本料金は発生します。
Q.ガス契約解約にかかる費用は?
最終使用分のガス料金は当然支払う必要がありますが、解約自体に費用がかかることは通常考えられません。ただし、契約内容や設備撤去の必要性によっては別途費用が発生することがあるかもしれません。
Q.ガス契約を解約せずに基本料金を節約する方法はありますか?
あまり多くありませんが、一部のガス会社では、長期不在など特定の条件下で基本料金が免除されるプランを提供している場合があります。一度ご利用のガス会社にお問い合わせされても良いかもしれませんね。
Q.空き家のガス契約解約後、家を売却する際の影響は?
ス契約の有無は直接的に家の売却価格に影響を与えることはほぼありません。
Q.ガス契約を解約する際、電気や水道はどうすればよいですか?
空き家のライフラインの契約をバラバラに管理していると、把握が困難になってしまいますので、もし電気や水道も使用予定がなければ解約を検討すると良いでしょう。
【まとめ】空き家のガス契約維持する?解約した方が良い?
本コラムでは空き家のガス契約について解説しました。
冒頭でもお伝えしたとおり、特殊な事情のない、いわゆる一般的な空き家であれば、ガス契約は解約してしまって問題ないケースが大半ではないかと思います。
ガス契約を解約しておけば、空き家のリスクで最も大きいリスクのうちの一つと言っても良い火災リスクを低減することができます。
空き家の電気をどうするか?というコラムもございます。ぜひ併せてご覧ください。
「相続してから何もしていない」という空き家のご所有者様は、一度ガス契約の状況を確認してみてはいかがでしょうか。