空き家に関する気になるニュースをご紹介します。
山口県宇部市は所有者不在で一部が崩落し、危険な状態に陥っている特定空き家について、行政手段の一つである「略式代執行」を開始しました。
宇部市は28日、同市新天町のアーケード商店街内にある所有者不在で一部崩落するなど危険な状態の特定空き家について、空き家対策特別措置法に基づく略式代執行を始めた。同市での措置は7件目で、商店街では初めて。
山口新聞「商店街の空き家解体へ」
今回の略式代執行は、宇部市としては7例目の措置となるようです。
今回、特筆すべき点は、このような措置が商店街の空き家(店舗併用住宅)に対して初めて適用されたことです。
この解体工事の費用は約570万円。その費用の40%以上となる約230万円は国からの交付金で賄われる予定です。未だ相続人が見つからないため、市は裁判所に相続財産清算人の申し立てを行い、費用の回収を図るというアプローチを採用しています。
宇部市のこのような行動は、危険な空き家が市民生活や商店街の活性化を阻害する問題を解消するための重要な一歩であり、他の地方都市にも参考になる事例と言えるでしょう。
代執行による空き家の解体は、本来個人の負担であるはずの不動産の解体費用に公金を使うことにほかなりませんので、このことの是非も十分考える必要があります。
今回の空き家ニュースに関連するキーワード
空き家ニュースの中でよく使用されるキーワードについて解説します。今回は「相続財産管理人」と「略式代執行」です。
相続財産清算人
「相続財産清算人」は、遺産分割が円滑に進まない場合や相続人が不明な場合などに裁判所が選任する役職の一つです。裁判所への申立は利害関係人(相続人や債権者など)が行います。
亡くなった人(被相続人)が残した財産(これを相続財産といいます)を適切に管理し、相続人が決まったらその財産を公平に分ける役目を果たします。
たとえば、誰が相続人なのか不明な場合や、相続人同士で遺産の分け方について意見が合わず争いが起こる場合など、相続が円滑に進まない状況が生じたときに裁判所から任命されます。
また、亡くなった人の財産の中に、管理が行き届かず問題を引き起こしている物件(例えば今回の記事のような空き家)がある場合も、その管理や解決の手続きを進める役割を果たします。
相続財産清算人が遺産を管理・分配した後、その活動にかかった費用は、相続財産から支払われます。
略式代執行
「略式代執行」は、所有者が不明であったり連絡が取れない場合に、公的機関が危険な建物の解体などを行うための法的手段です。空き家や放置車両が近隣住民の生活に悪影響を及ぼしていたり、公衆の安全を脅かしている場合に、市町村などの地方公共団体がこれを処分することができます。
略式代執行の呼ばれるとおり、「代執行」の手続きを簡略化した手続きです。
一般的な代執行は、たとえば賃貸人が賃借人に対して退去を求めても応じない場合などに、裁判所の判断に基づいて実施されます。賃貸人が裁判所に申し立てを行い、裁判所が退去命令を出した後になお退去しない場合、裁判所の執行官が介入して退去を強制することができます。
一方、略式代執行は、主に公衆の安全や生活環境を保護するために行われます。公的機関が、所有者不明の空き家や放置車両などの問題に対して直接介入し、安全な状態にするための処分を行います。この場合、裁判所の介入は必ずしも必要ではなく、市町村などの地方公共団体が直接行動を起こすことが可能です。
略式代執行の手続きは、まず当該団体が危険な状態にある物件の所有者に対して改善命令を出します。この命令に従わない場合や、所有者が不明であったり連絡が取れない場合には、団体が直接解体などの処分を行うことができます
なお、略式代執行で発生した費用については、原則として物件の所有者に請求されます。ただし、所有者が不明であったり、所有者が費用を支払うことができない場合には、国や地方公共団体が一部または全部を負担することもあります。