空き家問題が深刻化する中、2023年6月7日に空き家対策特別措置法の改正が行われました。
※改正法は改正から6ヶ月以内に施行される予定です。
このコラムでは、その改正内容と背景、及び影響についてわかりやすく解説していきます。改正法の内容を理解し、空き家対策の新たな動向を把握しましょう。
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【空き家問題のおさらい】増え続ける空き家問題の現状

日本全国で空き家の問題が深刻化しています。人口の高齢化や都市部への人口集中が進む中、地方の空き家は増加の一途を辿っており、2022年度の国土交通省の調査によると、全住宅の約8%が空き家となっています。
これらの空き家が放置されると、地域の景観を損なったり、害虫や野生動物の生息地となるなどの問題が発生します。さらに、地震や台風などの自然災害が起こった際には、倒壊や飛散物による二次災害のリスクもあります。
これらの問題に対処するためには、空き家の適切な管理が必要不可欠ですが、所有者が高齢で管理が難しい、相続人が明確でない、または所有者自体が行方不明であるといった事情により、空き家が適切に管理されずに放置されてしまうケースが多発しています。
進化する法律: なぜ改正が求められたのか

日本が直面する空き家問題は、これまでの法律による対策でも解決の糸口が見えてこない現状があります。
このセクションでは、その深刻な現状を踏まえ、改正がなぜ必要とされたのかを詳しく解説します。一緒に法律が進化する背景を学びましょう。
現行法の限界と新たな対策の模索
前述のような状況を受けて、2015年に空き家対策特別措置法が制定されました。この法律では、市町村が空き家を強制的に撤去する権限が認められ、また空き家の課税が強化されるなど、空き家問題に取り組むための一定の対策が講じられました。
しかし、その後の経過を見ると、この法律だけでは空き家問題を十分に解決することはできないことが明らかになりました。
強制撤去を行うための手続きが複雑で時間がかかる、または所有者が不明であるなどの理由から、法律が効果的に機能しきれていないという問題が指摘されています。
このため、法律を一歩進化させるべく、新たな対策が模索されていました。
空き家問題解決への新たな一歩: 改正法の狙い
2023年に改正された空き家対策特別措置法は、前述のような問題を解決するために策定されました。
その主な狙いは、空き家の管理が行き届かない「管理不全空き家」を新たに定義し、その取り扱いを明確にすることです。これにより、より効果的に空き家問題に取り組むことが可能となります。
法律の進化: 改正内容とそのインパクト

改正背景を理解した上で、次は改正法の内容とそのインパクトについて掘り下げていきます。
現行法とどのように異なるのか、具体的な内容とその影響を理解することで、改正法の意義がより明確になります。
空き家対策特別措置法の改正、その核心とは
改正法では、「管理不全空き家」という新たな概念が導入されました。
これは、所有者が不明、または所有者が存在していても管理が不十分であるなど、適切な管理が行われていない空き家を指します。このような管理不全空き家に対する新たな取り扱いが規定されています。
管理不全空き家については、市町村がその管理を代行することが可能となりました。また、これらの空き家に対する課税も強化され(小規模住宅用地の特例の適用除外)、所有者に対して適切な管理を行うインセンティブが設けられています。
明確になった変化: 現行法と改正法の比較
現行法と改正法の主な違いは、「管理不全空き家」の扱いにあります。
現行法では、所有者が不明などの理由で空き家の管理が困難な場合、市町村はその撤去を行うことができますが、そのための手続きは複雑で、実際にはなかなか撤去が進まないという問題がありましたが、改正法では、管理不全空き家に対して市町村が管理を代行することが可能となました。
また、管理不全空家に指定されることで、土地に課税される固定資産税の優遇措置(小規模住宅用地の特例)がなくなるため、所有者自身が管理を行うメリットも生まれています。
新たな課題: 管理不全空き家とは何か

新たに設けられた概念、「管理不全空き家」。
改正法の特徴的なポイントであり、その理解が新たな対策への鍵となります。このセクションでは、その定義と意義について深掘りします。新たな課題を理解し、その対策への一歩を踏み出しましょう。
新たなカテゴリー「管理不全空き家」の定義と対応
「管理不全空き家」はこのまま放置すれば「特定空き家」になるおそれがある場合に自治体から指定されます。危険な特定空き家になる前の段階の空き家を指すことを想定しているとのことです。

管理不全空き家とは、具体的には以下の3つの要件を満たす空き家を指します。
- 所有者が不明である、または所有者が存在していてもその管理が不十分であること。
- 建物が老朽化し、そのまま放置すると近隣の安全に影響を及ぼす恐れがあること。
- 所有者が不明、または所有者が存在していても、その管理が不十分であり、その状態が一定期間続いていること。
これらの要件を満たす「管理不全空き家」については、市町村がその管理を代行することが可能となりました。
管理行為の具体例としては、草刈りや害虫駆除などの最低限の管理を行うこと、建物が老朽化して危険であると判断された場合には撤去することなどがあります。
また、管理不全空き家に対する課税も強化されています。これにより、所有者自身が管理を行うことが経済的に有利となり、適切な管理が進むことが期待されます。
管理不全空き家がもたらす税制の変化とその影響
改正法により、管理不全空き家に対する課税が強化されました。管理不全空き家として指定され、自治体から改善の勧告を受けた場合、土地の固定資産税の優遇措置である「小規模住宅用地の特例」が適用されなくなります。
小規模住宅用地の特例は、200平米以下の住宅用地の固定資産税が6分の1に減免されるという制度ですので、この優遇がなくなると、実質的に増税されるということになるのです。
また、市町村にとっても増えた税収を使って空き家問題に取り組むことが可能となります。その結果、市町村の空き家問題対策がより実効性を持つことが期待されます。
未来への視線: 改正法の施行による展望

空き家問題が取り巻く環境は、改正法の施行とともに大きく変わるでしょう。
このセクションでは、その変化と改正法がもたらすであろう未来について考えていきます。視線を未来に向け、どのように空き家問題と向き合っていくべきか、一緒に考えてみましょう。
新法施行後の期待と潜む課題
改正空き家対策特別措置法の施行により、空き家問題に対する新たな一手が打たれました。
管理不全空き家の定義とその取り扱いが明確になったことで、市町村がより効果的に空き家問題に取り組むことが可能となります。そして、所有者に対する税制の変更により、適切な管理が進むことが期待されます。
しかしながら、この法改正にも様々な課題があります。例えば、市町村が空き家の管理を行うための費用や人員は十分に確保できるのか、また、所有者が不明である場合には課税強化が効果を発揮しきれない可能性があることなどが挙げられます。
これらの課題は今後の施行とともに観察し、適切に対応していく必要があります。
空き家問題の未来とその解決への道筋
空き家問題は、単に「放置された家」の問題だけでなく、人口動態、地域の活性化、災害リスクなど、さまざまな社会問題と密接に関連しています。
したがって、その解決には包括的な視点と、法制度だけでない多角的なアプローチが必要です。
具体的には、空き家の適切な利用法を模索すること、地域全体での空き家管理体制の構築、空き家の再利用を推進するための補助金制度の充実などが考えられます。また、これらの対策を進める上で、地域住民、行政、不動産業者などが連携し、それぞれが持っている知識や経験、リソースを活かすことも重要です。
また、法律の運用については、都市部と地方部で異なる状況を踏まえ、柔軟に対応していくことが求められます。具体的には、都市部では空き家を有効活用するための支援を、地方部では空き家による景観損ないや災害リスクの回避を重視するなど、地域の特性に合わせた施策が必要です。
空き家問題の解決は簡単なものではありませんが、改正法の施行により新たなステップが踏まれました。法の有効性を最大限に発揮しつつ、これを一つのツールとして、より広範な視点からの対策が進められることを期待したいと思います。
【まとめ】空き家対策特別措置法が改正されました
日本における空き家問題は深刻化する一方です。その解決に向け、空き家対策特別措置法の改正が進められ、新たな概念「管理不全空き家」が導入されました。この改正は空き家問題に対する新たな対策を提供し、空き家所有者に対する責任を明確に定めます。
しかし、法律の改正だけで問題が解決するわけではありません。地域や関係者間の協力、適切な補助制度の整備、地域特性に応じた柔軟な対応など、さまざまなアプローチが必要です。
改正背景や新たに設けられた管理不全空き家の概念、そしてその影響を理解することで、空き家問題の現状とこれからについての理解が深まりました。
空き家問題に対する対策は、これからの社会を形成するための重要な一環です。読者の皆様も、身近な空き家問題に目を向け、適切な知識を持って対応していきましょう。