皆さんは空き家の維持費についてどれくらい知っていますか?
「空き家だからそんなにかからないでしょ?」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、実は空き家の維持費は想像以上に高いのです。
税金や保険料など、誰も住んでいなくても発生する固定費を支払う必要があります。
これらの費用が積み重なると、年間で数十万円という大きな負担になります。
このような空き家を所有することの負担を正しく理解し、適切な判断を行うことが重要です。
このコラムでは、空き家の維持費について詳しく解説します。空き家を所有している方、これから空き家を所有する予定の方はぜひ参考にしてください。
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空き家の維持費の内訳
空き家の維持費とは何が含まれるのでしょうか。ここでは、主な費用項目とその金額について詳しく見ていきましょう。
固定資産税、都市計画税、火災保険
まず最初に考えるべきは、固定資産税や都市計画税、火災保険などの公的な費用です。
これらは空き家を所有しているだけで毎年発生します。
固定資産税
固定資産税は、土地や建物の価値に基づいて課される税金で、空き家であっても所有者は支払う必要があります。
その額は地域や建物の構造、設備などによりますが、一戸建て住宅の場合、平均的には年間10万円~15万円程度となるケースが多いです。
具体的な事例として、購入資金が全国平均相場の2,000万から4,000万円ほどの家の場合、固定資産税額が平均の15万円程度になると言われています。
これらの情報から、固定資産税は空き家の維持費の中でも大きな部分を占めており、その負担を軽減するための対策が必要となります。
都市計画税
都市計画税は、市街化区域内に土地や建物を所有している人に課される地方税で、都市計画施設の建設・整備などの都市計画事業の財源となっています。
その額は物件の価値によりますが、平均的には年間約3万円~5万円程度となるケースが多いです。
具体的な事例を挙げると、時価1,000万円の不動産の場合、課税標準額はおおむね700万円ほどになり、その0.3%を都市計画税として算出すると、約2.1万円の都市計画税になります。
火災保険
火災保険は、火災や自然災害などによる損害を補償する保険で、空き家の維持費の一部となります。
その額は物件の価値や地域、補償内容によりますが、平均的には年間約3万円~13万円程度となるケースが多いです。
具体的な事例を挙げると、東京都内の木造戸建てで、保険金額も一般的な条件であれば、火災保険料の相場は、「地震保険あり」で年間約9〜13万円、「地震保険なし」で年間約3〜5万円程度になります。
水道や電気の基本契約費用
次に、水道や電気の基本契約費用も忘れてはなりません。これらは空き家であっても最低限必要なサービスで、使っていない場合でも基本料金がかかります。
- 水道基本料:月額800円~1,500円程度。地域や水道管の口径によって異なります。
- 電気基本料:月額300円~1,500円程度。契約容量によって異なります。
その他の空き家の維持費用
庭木の剪定や草刈りの費用
空き家のある程度の広さにお庭がある場合や、そのお庭に植木が植えてある場合などは、定期的に草刈りや庭木の剪定などを行う必要があります。
もし何も手入れせずに放置してしまうと、草木の繁茂や庭木の越境などにより、近隣(または自治体)からクレームが入る事になってしまいます。
ご自身で対応できるのであれば、費用はかかりませんが、業者にお願いするとなると作業内容によっては数万円~30万円程度の費用がその都度必要になってきます。
建物の修繕費
空き家には実際に住んでいないので、たとえ家屋の老朽化が進もうとも関係がないと考えてしまうかもしれませんが、それは誤りです。
老朽化した建物は、建材の飛散や倒壊などの危険性があるため、最低限の修繕や改修が必要になるのです。
修繕費は作業内容によって異なりますが、例えば空き家でよくある軒天井の板材の剥がれなどの場合、規模によっては数万~10万程度の費用がかかります。
防犯対策
空き家は盗難や不法侵入の対象になることがあります。そのため、防犯カメラの設置やセキュリティ会社との契約など、防犯対策にも費用がかかります。
セキュリティ会社との契約などについては、継続的にかなりの費用がかかりますので低価格で利用できる「空き家巡回サービス」が昨今注目を集めています。
これらの費用を合計すると、空き家の維持費は年間で数十万円となります。
これは決して小さな金額ではありません。
空き家の維持費について理解し、適切な対策を行うことが重要です。
空き家の維持費の削減方法
空き家の維持費が高額であることを理解した上で、次に考えるべきはその削減方法です。
以下に、空き家の維持費を削減するための方法を解説します。
- 税金の軽減措置を利用する
一部の自治体では、空き家を有効活用するための税金の軽減措置を行っています。
詳しくは、各自治体のホームページや窓口で確認してみましょう。
空き家を有効活用することが主な要件となり、固定資産税等が軽減される措置などが代表的な例ですが、自治体によってはそのような制度自体がないケースや、制度を利用するために空き家の改修などの初期投資が必要になる場合が多いのがデメリットです。 - 空き家バンクを利用する
空き家バンクは、空き家を有効活用するための制度です。
空き家を登録することで、新たな住まいを探している人に貸し出すことができます。これにより、一部の維持費を賃料で補うことが可能です。
ただし、賃貸に出すために費用がかかる点や賃貸にまつわる様々なリスク(滞納リスクや貸主責任等)を負う必要があります。 - 空き家を売却する
最終的な選択肢として、空き家を売却することも考えられます。
当たり前ですが、売却をしてしまえば維持費を完全にゼロにすることができます。
これらの方法は、空き家の維持費を削減することができる一例です。どの方法も一長一短がありますので、自身の状況に合った最適な方法を選ぶことが重要です。
空き家維持費の具体的な事例紹介
ここでは、空き家の維持費が高額になった具体的な事例とその影響について紹介します。
事例1:想像以上に高額だった固定資産税
郊外にある実家を相続したAさんは、都会での生活を続けるためにその家を空き家としています。
その家は広々とした庭と古い木造の家屋からなる、一見すると風情のある物件です。
しかし、その風情ある物件が年間の固定資産税だけで約30万円もかかるという事実に、Aさんは驚きました。その固定資産税の内訳を見てみると、土地の価値が20万円、家屋の価値が10万円となっています。
さらに、火災保険に年間約10万円、水道・電気の基本料金に年間約10万円が必要で、これらを合算すると年間の維持費は50万円を超える計算。
賃貸に出してもすぐに借り手がつくようなエリアでも無いため、維持費のことを考えると、手放してしまうことが一番合理的でしたが、売却に反対する兄弟がいるため、すぐに手放すことができず、この先数年程度は維持費を払っていかなければいけないという状態になってしまいました。
事例2:空き家バンクを利用した結果
Bさんは、都会での生活を送りつつ、田舎にある実家を空き家として所有していました。
その家は、築30年以上の古い木造の家で、維持費がかさむために頭を悩ませていました。
そんな時、Bさんは地元の自治体が運営している「空き家バンク」の存在を知り、この制度を利用して自身の空き家を賃貸物件として提供することに決めました。
その結果、Bさんの空き家は、地元の若い夫婦に賃貸され、その家は再び生活の場として活用されることになりました。
賃料収入は月額5万円で、これにより一部の維持費を補うことができるようになりました。
今のところは大きなトラブルもなく、賃料収入を維持費に充てる事ができています。
ただし、家賃収入があると、確定申告が必要になってしまう点が多少面倒との事でした。
まとめ:空き家の維持費を理解し、適切な対策を
このコラムでは、空き家の維持費について詳しく解説しました。
空き家の維持費は、固定資産税や都市計画税、火災保険などの公的な費用、水道や電気の基本契約費用など、さまざまな費用項目から成り立っています。
これらの費用は、空き家を所有しているだけで発生し、年間で数十万円となることもあります。
しかし、税金の軽減措置を利用する、空き家バンクを利用する、空き家を売却するなど、空き家の維持費を削減する方法もあります。
これらの方法を活用し、自身の状況に合った最適な対策を選ぶことが重要です。
空き家の維持費について正しく理解し、適切な対策を行うことで、空き家が持つ経済的な負担を軽減することができます。
このコラムが、空き家の維持費について考え、その対策を行う一助になれば幸いです。