大手民間シンクタンクである野村総合研究所の発表(2024年6月13日)によると、2023年の日本の空き家率は13.8%となり、これまでの予測(17.4%)を下回りました。
これは予想以上の世帯数増加が原因とのことです。
しかし、このままいくと、2043年には空き家率が約25%に上昇すると予測されています。
特に注目すべきは一戸建ての空き家の増加で、2043年には2023年の2.6倍になると見込まれています。さらに、腐朽・破損のある「危険な空き家」も2043年には2023年の約1.6倍に増加すると予測されています。
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空き家現状と予測「全体としては想定より緩やか」
野村総合研究所の最新の調査結果によると、2023年の日本の空き家率は13.8%でした。これはこれまでの予測(17.4%)よりも3.6ポイント低い数値となりました。
要因としては特に「単独世帯(一人暮らし)の増加」で、これが集合住宅の需要を押し上げ、空き家率の上昇を抑制しました。
単独世帯の増加には、以下のような社会的背景が考えられます。
- 晩婚化・非婚化の進行
- 高齢者の独居増加
- 若者の独立志向
しかし、この傾向は長くは続かないと予測されています。世帯数の増加は2030年代半ばまで続くと見込まれていますが、その後は減少に転じると予想されています。
その結果、2043年には空き家率が25.5%にまで上昇すると予測されています。
これは、いままで野村総研が予想していた空き家率32%(3軒に1軒が空き家)と比較すると多少少ない数値ですが、全国の住宅の4軒に1軒が空き家になるという深刻な状況を示しています。
空き家の増加は、地域コミュニティの衰退、防犯・防災上の問題、景観の悪化など、様々な社会問題を引き起こす可能性があります。そのため、今後20年間で空き家問題への対策がますます重要になってくると考えられます。
一戸建て空き家が2.6倍に!急増の背景と深刻な影響
野村総合研究所の資料によると、空き家全体の増加ペースは緩和されましたが、一戸建ての空き家に関しては深刻な状況が予測されています。
一戸建ての空き家数は2043年には2023年の2.6倍にまで増加すると見込まれています。
この急増の背景には、人口動態の変化があります。世帯数の増加を牽引しているのは主に単独世帯(一人暮らし)ですが、彼らは一戸建てよりも集合住宅を居住先として選ぶ傾向があります。その結果、集合住宅の空き家率は低下している一方で、一戸建ての空き家率は上昇を続けています。
さらに、今後は単独世帯以外の世帯数が減少することが予想されており、これが一戸建ての空き家増加に拍車をかけると考えられます。一戸建ての空き家は、その規模や構造上、管理や活用が難しいケースが多く、放置されると地域の景観や安全性に大きな影響を与える可能性があります。
このため、一戸建ての空き家対策は今後の空き家問題において特に重要な課題となっていくでしょう。早期の対応や、空き家の効果的な活用方法の検討が急務となっています。
倒壊の危険性も:1.6倍に増加する「危険な空き家」の脅威
空き家問題の中でも特に懸念されるのが、「危険な空き家」の増加です。
野村総合研究所の調査では、腐朽・破損のある「危険な空き家」の数は、2043年には2023年の約1.6倍にまで増加すると予測されています。
特に注目すべきは、一戸建ての空き家における「危険な空き家」の割合が高いという点です。一戸建ての空き家は、その構造上、適切な管理がなされないと急速に劣化が進む傾向があります。そのため、一戸建ての空き家の増加は、必然的に「危険な空き家」の増加につながると考えられます。
「危険な空き家」の増加は、単なる景観の問題にとどまりません。これらの空き家は、以下のような深刻な社会問題を引き起こす可能性があります:
- 安全上の問題:倒壊のリスクが高く、周辺住民の安全を脅かします。
- 防災上の問題:火災の発生源となったり、災害時の避難経路を妨げたりする可能性があります。
- 防犯上の問題:不法侵入や犯罪の温床となる可能性があります。
- 衛生上の問題:害虫や野生動物の棲家となり、周辺の衛生環境を悪化させる可能性があります。
これらの問題を防ぐためには、「危険な空き家」の早期発見と適切な対処が不可欠です。所有者による適切な管理はもちろん、行政や地域コミュニティ、専門業者などが連携して対策を講じていく必要があります。
【まとめ】一戸建て空き家が2.6倍に!?急増する「危険な空き家」
本コラムでは、野村総合研究所の最新資料に基づき、日本の空き家問題の現状と将来予測について見てきました。以下に主なポイントをまとめました。
- 2023年の空き家率は13.8%で、以前の予測より低くなっていますが、2043年には約25%まで上昇する見込み。
- 特に一戸建ての空き家が急増し、2043年には2023年の2.6倍になると予測される。
- 腐朽・破損のある「危険な空き家」も増加傾向にあり、2043年には2023年の約1.6倍になると予想される。
これらの予測は、空き家問題が今後ますます深刻化することを示唆しています。その中でも特に一戸建ての空き家と「危険な空き家」の増加は大きな問題です。
この問題に対処するためには、行政と不動産事業者や家財処分事業者などの専門家が密に連携していく必要があります。
今後ますます空き家の適切な管理や活用、必要に応じた解体など、状況に応じた適切な対応が求められるのです。