国土交通省は、放置空き家の市場流通を促進するため、不動産業者が受け取る仲介手数料の特例制度を拡充することを決定しました(宅地建物取引業法に基づく告示の改正)。
この制度変更は、空き家の売買および賃貸の両方を対象としています。
今回の制度変更では、売却価格が800万円以下の空き家を特例の対象とし、仲介手数料の上限額を30万円に引き上げます。
例えば、200万円の空き家売買では、現行法の上限18万円から特例適用後は30万円まで手数料を受け取ることができるようになります。
また、賃貸仲介においては、長期間使用されていない空き家は今回の変更により、通常の手数料(賃料の最大1ヶ月分)に加えて、貸主からさらに1カ月分を追加で請求できるようにします。
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今までの負動産仲介手数料制度
現在の宅地建物取引業法では、不動産仲介業者が受け取る報酬額は、売買価格に応じて定められています。具体的な仲介手数料率は以下の通りです。
- 売買価格が200万円以下の場合:5.5%
- 200万円超400万円以下の場合:4.4%
- 400万円超の場合:3.3%
ただし、現状でも売却価格が400万円以下で状態の悪い「低廉な空き家」については、特例が設けられています。この特例では、仲介手数料の上限額が18万円に設定されており、一般的な物件よりも高い手数料を受け取ることが可能です。
例えば、200万円の低廉な空き家の売買仲介では、通常は11万円(5.5%)が上限ですが、特例を適用することで18万円まで手数料を受け取れます。この特例は、状態の悪い空き家の売却を促進するために設けられたものですが、対象となる物件の価格が400万円以下に限定されているため、適用範囲が限られているのが現状です。
低廉な空き家とは
「低廉な空き家」とは、以下の要件を満たす物件が「低廉な空き家」として定義されています。
- 売却価格が400万円以下である
- 通常の売買契約と比較して現地調査等の費用がかかる
「低廉な空き家」の特例が設けられた背景には、このような物件の流通促進が課題となっていたことがあります。一般的に、売却価格が低く、状態が悪い物件は、不動産業者にとって採算が合わず、敬遠されがちでした。そのため、市場に出にくく、放置されるケースが多かったのです。
この特例制度により、不動産業者は通常よりも高い仲介手数料を受け取ることができるようになりました。これにより、低価格帯の空き家でも一定の収益が見込めるため、不動産業者が積極的に関与するインセンティブが働くようになったのです。
現行の特例制度では、対象となる物件の価格上限が400万円に設定されていましたが、今回の変更で上限800万円までとなりました。これにより制度の対象となる不動産が広がった事になります。
【放置空き家の流通促進策】変更後の仲介手数料制度
宅地建物取引業法の告示改正により、空き家の売買および賃貸に関する仲介手数料の特例制度が拡充されます。
売買仲介手数料については、特例の対象となる空き家の価格上限が400万円から800万円に引き上げられます。これにより、より多くの空き家が特例の適用対象になります。また、仲介手数料の上限額も18万円から30万円に増額されます。
例えば、500万円の空き家売買では、現行制度では一般物件の手数料上限である16万5千円(3.3%)が適用されますが、改正後は特例の適用により30万円まで手数料を受け取ることができるようになります。
賃貸仲介手数料についても、変更が予定されています。現行制度では、貸主と借主から合計で賃料1カ月分が手数料の上限となっていますが、長期間使用されていない空き家の場合、特例により貸主からさらに1カ月分の手数料を受け取れるようになります。
【まとめ】
今回の制度改正により、不動産業者が低価格帯の空き家売買や賃貸仲介に積極的に関与することが期待されます。その結果、これまで市場に出にくかった空き家の流通が促進され、放置空き家の増加を抑制する効果も見込んでのことかと思います。
ただし、仲介手数料を高くするということは、売り主の負担増に繋がりますし、不動産業者が販売活動をしても売れない(そもそも需要がない)不動産が売れるようになるわけでもありません。
根本的な空き家対策として、今回の変更だけでは十分とは言えませんので、他の施策と組み合わせて総合的に取り組む必要があるでしょう。